㈱イー・ファルコン 研究開発チーム チームリーダー |
多賀 ひろみ |
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※登場する方の所属企業、役職等は当時のものとなります。
1. はじめに
6月1日開始の17新卒採用選考に伴い、各企業での活動が本格化しています。
本年度は、6月を待たずに内々定を出し、採用活動が終盤に突入した企業も多いのではないでしょうか。
今回は、2015年12月~2016年5月中旬までの期間に2017年度新卒採用選考において、適性検査eF-1Gを受検した学生の結果から17採用の全体傾向とその考察を、一足早く報告いたします。
なお、16採用の傾向については、下記URLよりご確認いただけます。
https://www.e-falcon.co.jp/voices/voiceArticle20.html
2. 性格特性の比較
16採用と17採用での性格特性を比較したところ、両者に大きな差はみられませんでした。その中でも変化がみられた項目としては、「基本特性 関係系特性(周囲や外との関わりにおける性格特性)」や「エモーショナル特性(メンタル面の強さ・健全さ)」があげられます。これらの項目では、16採用と比較し、下がっていることが明らかになりました。

学び(認知・思考)スタイルでは、自らが仮説立てて道を切り開こうとする「自力で探索」する人材(Aスタイル・Dスタイル)が昨年と比較して増加しました。
これらから、17採用の学生は、他者と関係性を築きながら物事に取り組むというよりは、これまで以上に自分の思いや軸を大切にして物事に取り組むのではないかと考えられます。
また、役割志向8タイプにおいては、昨年に引き続き「ゆらぎ」グループ(このままで良いのか問う人材)が増加したことが明らかになりました。一方で、「発展化」グループ(こうすべきではないかと自ら考えて動く人材)、中でもCL8(周りをサポート)は、年々減少しています。

この変化についてさらに詳しく見てみると、「ゆらぎ」グループと「発展化」グループのボーダーライン上にいる人材が今回たまたま「ゆらぎ」側になったということではなく、もっと根本的な変化が認められています。
「発展化」グループは“物事に対して自ら積極的に関わっていく姿勢”“周囲の人々に対して的確に働きかけていこうとする姿勢”があります。
今回の比較においては、これらの姿勢を持った学生が減少する一方、それと対照的な“自分の発意を大切にしていこうとする姿勢”の学生が増加していることが確認されました。
視点を社会人(実際に企業で就業している人材。年齢、役職等問わず)に移すと、「最適化」グループと「発展化」グループが7割以上を占めていることがわかります。採用選考に関わる人も同様の割合と考えると、自分の軸を強く持ち、熟考を重ねることで行動に移す「ゆらぎ」グループの比率が増えたことは、“最近の学生は変わってきた”と感じることでしょう。
採用する側はこの変化をどうとらえると良いのでしょうか。
「ゆらぎ」グループは、何のために目の前のものに取り組むのか、その目的や目標が企業との間で確かに繋がった時こそ、その力が発揮されます。今あるものに問いを持ち、何が必要なのかを改めてみつめ“ゆらぎ”を起こす人材は重要な役割を果たす存在になると言えます。
役割志向8タイプの詳細は下記をご覧ください。
http://www.e-falcon.co.jp/services/toolDetail7.html
3. 時代背景から紐解く学生の変化
では、なぜ学生たちはこのような変化をしているのでしょうか。
2017年に就職活動を行う大学生の多くは、1994年、1995年生まれです。
時代背景として、経済はバブル経済崩壊後の成長停滞期にあたります。
1995年1月には、阪神淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が発生し、日本国内は大きな動揺と悲しみが渦巻いていました。
さらに、2001年9月には、アメリカで同時多発テロが発生するなど、社会情勢が混迷する時期に幼少期を過ごしています。
多感な青年期は、少し経済が回復しかけた矢先、2008年9月にリーマンショック、2011年3月に東日本大震災が発生するなど、先行きの見えない状況でした。
また、2006年に公布・施行された「個人の価値を尊重し、自主及び自律の精神」を重んじた教育基本法の下で中学以降の学校教育を受けたことも忘れることができません。
一方、この時期に起きた新たな変化としてインターネット、スマートフォン、ソーシャルネットワークサービスの普及があります。
1995年にインターネットが一般家庭でも使えるようになると、わずか7年後の2002年には世帯普及率は50%を超えます。
就職活動を行っている大学生は、すでに幼少期からパソコンに多く触れていますが、その後、スマートフォンが広く普及することで、インターネットが日常生活に深く浸透しています。
また、2011年3月の東日本大震災以降、社会全体でソーシャルネットワークが広く使われるようになり、現在広く利用されているコミュニケーションアプリLINEなどのサービスを使いながら大学生は独自のネットワークを形成して思春期を過ごしてきたと言えます。
こうした、社会の不透明化と教育基本法、ソーシャルネットワークの浸透、さらに2014年に流行した「ありのままで」に見られるような個性尊重の風潮などが学生の特性に一定の影響を与えていることは間違いないでしょう。
4. 「ありのままで」勝負する学生たち
17採用においても、昨年に続き採用期間の短期化は否めず、依然として学生の売り手市場が続いています。
16採用に続き学生は必要以上に取り繕うことはなくなり、望む仕事に等身大の今の自分で勝負しようとする姿勢へと変化しています。ある調査でインタビューをした16採用の内定者は、「応募した企業が望む人材像を演じていても、息が詰まる。そのままの自分を評価してくれる企業に入社することにした。」と語っていました。同様の声は複数の内定者から聞かれ、採用選考という張り詰めた場面で、企業の求める人材に自分を当てはめるのではなく、“そのままの自分を受け入れてくれる企業にこそ価値を見出している学生”は少なくないことが分かりました。
これは、先述した「ありのままで」にも表れているように、個々人の良さを育む教育方針の下歩んできた17採用学生の特徴とも呼べるのではないでしょうか。
5. 採用、入社後の育成で求められる企業の取り組み
こうした学生側の特性変化に対応して、企業側にも採用、育成時の応じ方に変化が生じています。
学生の特性が、内向的に変化しているのに加え、個人のリズムで考え、行動しようとする面が強まっていることから、企業側は個人の特性を丁寧に見つめ、応じていくことが、求められています。つまり、個々の魅力ポイントや動機促進のポイントは何かを踏まえ、対応していくことが採用を成功させる上で必要不可欠となってきているのです。
さらに「ゆらぎ」グループの学生は、先述の通り、内なるエネルギーが強いことが特徴的であることから、新たな発想やアイデアを生み出していく、という面においても十分な力を発揮していく強みを兼ね備えています。技術革新が早まり、市場が急速に変化する中、企業固有の魅力や差別化ポイントを更に明確にしていく必要があります。そこで、こうした新たな“ゆらぎ”を起こす人材の獲得は、各企業においても重要度が高まってきているといえるでしょう。
こうした“ゆらぎ”を起こす人材が入社後に活躍するためには、個人の存在を尊重しながらも、いかに各企業の環境に定着させるかが鍵となってきます。組織の中に留まり、役割を果たしていくといった視点は、会社への適応性やエンゲージメント(絆)といった要素を育てていく必要があるといえます。
したがって、個々の特性に応じた対応策を講じていくための手がかりとなるアセスメントを通して、活躍する可能性(ポテンシャル)や定着する度合い(エンゲージメント)など、あらかじめこうした視点を総合的に把握した上で、効果的な訴求やフォローに臨んでいくことが大切です。
適性検査eF-1Gでは、個社ごとの要望に応じて定着の可能性や、個別の対応策に関する指標を設定することができます。

例えば、「チームワーク」「エンゲージメント」を確認できる個票もあります。
この個票では、「ゆらぎ」グループでも自分軸ばかりでなく、他者と協働できる素地はあるか、企業の目的に合わせていけるかを確認していただいています。
市場が変化し、5年先の情勢も予測できない中、企業の成長が不透明になっています。
その中において、事業の持続・発展を支える人材の採用、育成は極めて重要なテーマです。
私たちイー・ファルコンは、お客様の“今”を確かなものとし、“未来”を創り支えるため、人と組織の成長・発展に取り組んでいます。そして、今後も知見を深め、お客様とともに歩んでいきたいと考えております。