
話し手
株式会社オートバックスセブン
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人事部 人事・戦略グループ 林 寿彦氏 |
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聞き手
株式会社イー・ファルコン | 執行役員事業本部長 水須 明 |
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事業本部マネージャー 大橋 直人 |
※登場する方の所属企業、役職等は当時のものとなります。
1.オートバックスセブンの事業内容と共に人事も変遷
- ― 改めましてカー用品業界をけん引されている貴社の事業内容とこれまでの経緯をお聞かせください。
皆さんご存じのカー用品店「オートバックス」のフランチャイズ本部が主たる事業で、その中には卸売機能があります。それ以外に、車の買い取りと中古車の販売、BMWの正規代理店、海外における「オートバックス」の店舗展開があります。さらに、昨年から車を通じたライフスタイル関連のファッションブランド「JACK & MARIE(ジャックアンドマリー)」を立ち上げZOZOTOWN(ゾゾタウン)への出店を皮切りにショッピングモールへの出店を進めています。カー用品市場そのものが縮小している状況の中で、違うマーケットを開拓していくということですね。
歴史的には、オートバックスが登場する以前は、バッテリーは電装店、タイヤやオイルはガソリンスタンドというように、カー用品は、それぞれの専門店を回らなければならなかったのですが、現在は一つの店で多品種が揃って、取り付けまでやってくれるというのが当たり前になりました。
― 林さんご自身の社内での役割について教えてください。
私自身、モータリゼーションが盛んになっていく時代と共に育った世代ですので、好きな車に関する仕事がしたいと入社を決めたこともごく自然な感覚でした。当初は卸売と小売が別会社でしたが、私が入社した時には合併して一つの会社になり、フランチャイズの本部機能の会社になっていました。従業員数は今では1200人位ですが、当時は400人位。まだ人事という部署が存在せずに総務部に配属され、採用活動から社用車の管理、加盟店舖へのファックスの導入手配など、いろいろなことをやっていましたが、次第に組織が大きくなり、部署も細かく分かれるようになっていきました。
昭和63(1988)年、バブルで採用難が発生し、フランチャイズ加盟店も含めてオートバックス全体が人材不足となったことから、フランチャイズ加盟店全体のリクルート活動をやろうということになりました。加盟法人の求人票を書かないといけないということで、先輩社員と二人で加盟法人の就業規則を整備するため全国を回りました。その後に、シェアードサービスという管理部門を分離させる考え方が出てきて、その流れでオートバックス・マネジメントサービスという給与計算や経理処理を専門に行う子会社ができました。たまたま私は、それまで担当していた業務がその会社に移管されたことで転籍しました。社歴30年強になりますが、最初の10年は本社、次の10年は子会社、さらにその後の10年は本社です。
2.「健康経営」の考え方は創業時からの基本
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― 貴社の「健康経営」という取り組みについて教えてください。
創業者が事業の途中で病気になったり、社員が大病を患い亡くなったりした経験から、創業者の意識の中には健康に対する思いが強くあったと思います。当時は、フランチャイズシステム、ポール・J・マイヤー氏の成功哲学(SMI)、そして西式健康法と、この3つを経営の3本柱としていました。サンスターさんの取り組みを参考にしながら、弊社でも「健康道場」を取り入れようということになり、西式の先生の指導のもと、6日間合宿で断食を行っていました。1980年代の話ですね。2000年代に入ってそのやり方は見直しながらも、「健康経営」という考え方は現在までずっと続いています。
― ストレスチェックはいつから実施していますか?
2007年、「心の健康診断」という名で始まったと記憶しています。当時は法制化されていたわけではなく、当社独自に隔年で実施していました。当時使用していたのは、某社のもので400問。どのくらいの回答率だったかわかりませんが、回答はとにかく大変な作業だったことは確かです。これを実施したきっかけについては定かではありませんが、人事部長に先見の明があったのかもしれません。いずれにしても、メンタル面のケアを重視し続けていました。
3.イー・ファルコンのストレスチェックのメリット
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― 当社との出会いやきっかけについて教えてください。
最初にイー・ファルコンとの接点は2005年位だったでしょうか。採用時の面接ツールとして適性検査eF-1G(エフワンジー、導入時はeF-1“エフワン”)を取り入れ、当社独自のコンピテンシーの中に、従業員に求める会社のポリシーをミックスさせました。これまでは、面接官の主観的な基準で応募者を判断していましたが、適性検査eF-1Gを通して当社の人材要件で当社に合った人材の見極めと採用面接の標準化をスタートさせることができました。当初は入社時のみの利用でしたが、その後、既存社員の現状把握もしていきたいということで、全社員にも実施しました。
― ではイー・ファルコンのストレスチェックを選んだ理由は何ですか?
前述のように平成26(2014)年の法制化前よりストレスチェックは実施していましたが、コストが高い一方でマネジメントに対する具体的なヒントにつながるフィードバックがなく、融通がきかないといった問題がありました。気に掛けなくてはならない相手が誰か分からないのにどう対処していいのか分からないという声がマネジメント側から上がる中で、法律をクリアするためだけではなく、彼らに何らかのアドバイスをフィードバックしてあげたいという思いがありました。他社からもいろいろ話がありましたが、最後はどこまで課題に対して真剣に向き合ってくれるか、こちらの願いがアウトプットされるかという観点で、イー・ファルコンを選びました。採用でeF-1Gを長らく使用しているということもあり、適性検査の結果も活用することでストレスという課題に対する何らかの解決策が見出せるのではないかという期待もありました。
― イー・ファルコンのストレスチェックの実施を通じて感じたことを教えてください。
実際のマネジメントにどこまで活きているかは検証中ですが、ストレスチェックの結果と共にeF-1Gの性格タイプ情報もフィードバックすることで、マネージャーからの食いつきが明らかによくなりましたね。フィードバックをもらっても何ができるか分からない、部門ごとの平均値をわたされても使いようがない、という声が、イー・ファルコンに変わってからアウトプットに対して興味を持ってもらえるようになったと思います。人事異動で部下が入れ替わるので、その新しい部下のタイプは何だという興味は常に持たれているようです。
― 昨年よりフィードバックシートに「組織の良いところ」という項目を増やしましたがいかがでしたか?
当社は組織風土として弱点を克服しようという傾向が強く、「良いところ」というのは皆見ないんですよ。ですから、指摘されるところはなるべく減らしたい、相手に弱みを見せたくない。これまで褒められるよりは責められることの多い環境にいたからだと思います。だからこそ、組織の良い面に焦点を当てた内容をフィードバックに取り入れていただきました。長年培った風土なのですぐには変化しないと思いますが、少しずつ効果検証をしていきたいと思っています。
<図1>マネージャー向けのフィードバックシート
「Ⅲ マネジメントアドバイス」に、eF-1Gの結果が使われており、別表で個人の性格タイプを確認することができる。
<図2>個人向けフィードバックシート
厚労省推奨の3要素に加えて、ストレスへの対処傾向を示す「ストレスコーピングの傾向」を出力。個人のセルフケアを促している。
4.今後はさらに課長に対するフィードバックに注力
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― イー・ファルコンのストレスチェックに期待する点を教えてください。
人事部門からすると、ストレスチェックの単純な結果のみならず、マネージャーへマネジメント力向上に寄与する建設的な情報を与えてあげたい。そのような目的から、ストレスチェック結果に性格タイプ情報が載っていることは非常に有用であると思います。タイプ別にマネジメントしなさいというのはマネージャー研修で講義を受けてはいますが、いちいちテキストを見直すことはないので、年に一度こういう機会があると再確認できます。もちろん会社だけがストレスの原因ではないですが、一人ひとり、自分や部下のタイプや特性を把握し関わることで、個人のストレス軽減につながると考えています。
いずれにしても、マネージャーがマネジメントをするのが難しくなってきました。一律でやっても成果が上がらない世の中になってきたので、個別で追いかけないとだめですね。組織が30人にもなれば、もう目が届かない。組織をもう少し小さくしないと。グループ長である課長が部下をしっかりと見ることが大切で、そうなるとこれからはマネージャーの下の課長のマネジメント力のレベルを上げないとうまくいきません。ストレスチェックの設問にある「直属の上司」はほとんどが課長になるので、今後はマネージャーに加えて課長に対するフィードバックに力を入れていかねばと思っています。
世の中全体が右肩上がりの時はいいですが、特に車関係は100年に一度ともいわれる転換期にあります。今後、EV(電気自動車)に変わるとなると、関連する部品がまったく違います。車自体の概念が変わり、機械工学が全盛だったのが、電子系の人材が求められるようになります。自動運転が進むと要らなくなるものがたくさんある。タイヤとブレーキは残るでしょうが。この過渡期の中で、カー用品だけではなく新規事業も手掛けており、人材も多業種の新しい分野にも対応しなくてはならないという背景があります。
― 今後の方針を教えてください。
今のところ、他社のパッケージに戻るという考えは全くありません。もっとこのようなフィードバックシートにしていこう、このような結果が出たので、こういう研修ができますというように、当社の実態に合った提案をしていただけるとうれしいです。フィードバックシートはあくまでハードですので、今後はいかにソフトの部分をつけていけるかがポイントになると思います。とりあえず法律はクリアという考えならいいですが、コスト重視のパッケージで対応してもその会社にとって効果はないのではないでしょうか。
また、これは要望なのですが、共同実施者として産業医を用意していただけると、契約産業医のいない子会社が利用しやすいというのがあります。
― ありがとうございます、我々もご意見を伺いながら、改善を重ねていきたいと思っています。
おわりに
- ― 最後に、経営・人事にかかわるご担当者の方々へのメッセージをお願いします。
今は法律が大きく変わろうとしていますから、人事パーソンが発言するチャンスだと思っています。人事はどちらかというと「銃後の守り」のようなところがあり、発言権も小さくなる傾向にありますが、これだけ世の中が「働き方改革」と言っている以上、前に踏み出していくチャンスであると思います。充足している会社は別ですが、今がまさに「今いる人たちをいかに辞めさせることなく、気持ちよく働きながらパフォーマンスをあげていってもらえるのか」を真剣に考え、勇気をもって取り組んでいくべきタイミングなのではないでしょうか。
イー・ファルコンのストレスチェックにご関心のある方はこちらを参照ください。
[ストレスマネジメントサーベイ特設サイト]
http://www.e-falcon.co.jp/sms/