
話し手
株式会社インタースペース
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取締役 コーポレート管掌 平野利明氏 |
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聞き手
株式会社イー・ファルコン | 執行役員 事業本部長 水須明 |
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※登場する方の所属企業、役職等は当時のものとなります。
1. ~自身の信条~ お客様も自分たちも幸せになる働き方をしたい
- ― 平野さんご自身の、インタースペース及び河端社長との出会いをお聞かせください。
インタースペースの会社設立は1999年11月です。私の入社は2006年7月で、東証上場の2か月前に入社しましたので、創業期後のタイミングでした。転職活動の選択肢の一つとしてインタースペースがあり、最終面接の面接官に社長の河端がいたというわけです。当時、会社を選ぶ上で大切にしていたことは、社とお客様の幸せが分離していないこと。お客様の幸せが自分たちの幸せとなり、自分たちの幸せがお客様の幸せに繋がっていく、そのような働き方でした。Win-Winの関係ですね。そのような価値観で複数社の面接をしている中で河端と出会い、そのブレを感じさせない真っ直ぐな姿勢に、この人と働きたい!と思ったことが始まりです。
人事に関わる仕事を希望していましたが、入社後は、今主軸となっているアフィリエイト事業の新規営業担当としてスタートしました。まずは営業から入り、チャンスがあったら人事へと思っていました。
― 人事の仕事に関心を持ったきっかけを教えてください。
私は、学生時代に某飲食店チェーンでアルバイトをしていたのですが、そこでは毎月「お客様に届けたい思い」という内容のビデオレターが本部から各店舗に届くのです。社長がサービスに対する考え方や店で働くアルバイトに求めること、等々、を熱く語るという内容でした。そのビデオは、アルバイトも全員見ることが義務付けられていたのですが、私たちには少しの「やらされ感」もなく、毎月見るのを楽しみにしていました。ビデオを見ると、私たちの中で「そういう店を作りたいよね!」という会話が自然と沸き起こり、仕事に対してとても前向きになれたことを覚えています。
そのようなポジティブな雰囲気が社長のメッセージを通して作られていた一方で、アルバイトの評価に対しては、色々と不平不満が現場から出てくることもありました。自分の方が頑張っているのに、なぜあの人よりも給与や役職が上がらないのか。私としては、メンバーの不満は心情的に理解できる面もありましたが、それ以上にその状態がとてももったいないと思ったのです。自分の力を負のテーマに注ぐのではなく、お客様に向かって注ぐことができれば、もっと良い店が作れるのに。どうすればそのような本質的な方向に力を注げる環境を作ることができるのか、そういった仕組みをつくる仕事をしたいと思ったのが、人事に携わりたいと思ったきっかけです。ただ、自分のタイプとしては、そのノウハウをいろいろな人に伝達するという携わり方よりも、作ったものがどのように運用されて組織が変わっていくのかを最後まで見届けたかったので、コンサルティングという立場ではなく、リアルな現場に自らの身を置くことのできる企業人事を選びました。
2.~仕事観と業界特性~ ものすごいスピードで変化することそのものを楽しむ
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― ご入社以降で結構ですので、貴社の歴史、事業内容の環境や位置づけについて教えてください。
今、主軸の一つであるアクセストレードというアフィリエイトサービスは、2001年3月からスタートした広告事業です。社長の河端は某証券会社時代に、アメリカのヤフーなどインターネットが経済を大きく変えて活性化している情報をいち早くキャッチしていました。いろいろな分野の中でも、特に広告に注目していたようです。従来のメディアのような多額の広告費ではなく、広告主様が求める成果に対してきちんと広告費をいただくことがフェアだ、インターネットの技術を使うと効果が計測でき、フェアな広告事業が実現できるということで始めたビジネスです。またメディア事業では、日本最大級ママ向けWEBサービスとしての「ママスタジアム」の運営を行っています。東南アジアを中心とする海外展開も加速し、グローバルにインターネット事業を展開しようとしている最中ではあります。
― 業界の特徴や概況を教えてください。
どこまでを周囲(業界)として見るのか難しいところですが、ウェブやインターネットという広い業界の中のインタースペース社として見るのであれば、産業としてはまだ20年足らずです。そのわずか20年という年月の中でも変化の速さはすさまじいものがあります。組織や事業の移り変わりと変化への対応力という意味で、求められているところに自分も自分の会社もいるということは感じています。
― そのものすごいスピードの中で事業を継続してやっていくのは、相当の工夫や試行錯誤の積み重ねが必要ではないかと思うのですが。
事業を継続していくことに対し、当事者の感覚でいうと、何か工夫しなければならないという受け身というよりは、単純に変化があることが楽しくワクワク感を楽しんでいる方が強いですね。もの凄い変化に流されるのではなく、変化そのものを楽しんでしまう感覚が、原動力となっていると思います。それは僕自身もそうですし、社員も、河端もそうですね。
3.~調査始動のきっかけ~ 社員の間から聞かれた小さな声
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― 貴社の現状・未来から鑑みた課題というものをどうご覧になっていらっしゃいますか。
今の時代、事業が世の中にマッチするから、企業がそのサービスを提供し続けられるのかというと、その感覚は年々薄くなっています。サービスを支えているのは技術だけではなくて人。人の集合体が組織であり、ここに対するアプローチがないと、一方にある事業もいい形で駆動していきません。言うまでもありませんが、インタースペースの中の課題は限りなくたくさん存在しています。今まで右肩上がりで急成長した裏には、属人的な判断があったり、その場その場で対応してきたという経緯もあります。過去から未来に向けて、中・長期的に組織に対する施策や打ち手を考えようという意識は、当初は薄かったように思います。
― 今回の意識調査のキーワードにもありますが、貴社が大切にされているビジョンや、きちんと発信していこうよという機運が生まれたきっかけは何だったのでしょうか。
社員の小さな声からスタートしています。例えば、年度の事業方針を発表した後のフラットな雑談の中で、社員からふと、一体感がないとか、一人ひとり話す中の本質が微妙にリンクしていない感じがするといったホンネが、チラッチラッと聞こえてきました。その情報を集めて、一つ仮説として成り立つのが、発信している自分たちがインタースペースとしてどのような価値を世の中に提供していくのか?という存在意義が、明確に定まっていないように見えるから、現場にしっかりと伝わっていないのかもしれない、という思いに至ったのです。
4.~選択の理由~ 現状把握を超えた“打ち手の構造”が見えるサーベイ
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― 今回、弊社の組織診断(CAS)を選択された経緯をお聞かせください。
社員の状態を客観的に仮説以外の情報も含めて把握することができることが組織サーベイのメリットだと思います。ただ、客観的に知ることができるデータなのか、何かのためになるデータなのかというと、後者の方がより重要です。要は、定点観測を通して現状を知るだけではなく、未来の行動に活用できるデータでないと、当社が組織サーベイを実施する意味や価値が持ち辛いのです。ですので、ただの集計ではなく、データを通して様々な因果関係を読み解くことができ、インタースペースという独特の世界の中でどのように結び付いているのかまで見られると、未来の自分たちの打ち手や行動に活用できるデータにできるので、そのような組織サーベイを行いたいという思いがありました。問題の原因は何か、どのようなプロセスで打ち手を考えるべきか、その因果関係を解明できるのがイー・ファルコンの組織診断(CAS)であると思います。たくさんある組織サーベイ中で、他社ではなくイー・ファルコンを選ばせていただいた理由はそこにあります。
― 実際に昨年、一昨年と、組織診断(組織活性度調査:CAS)を実施したわけですが、その結果をふまえた印象を教えてください。
想像通りの結果もあれば、社員は意外とこういうところを大切にしたいと思っていたのか、または、社員には経営陣が大切にしていないと映っていたのか、等々、様々な発見がありました。社員の細かな事実が確認できただけでなく、想像を越えた気づきありました。
― 経営層の方がその結果をご覧になっての反応はいかがでしたか。
ひとことで言うと、僕も含めて衝撃でした。社員一人一人の声の集合体として定量化したもので出てくるので、自分たちがこうあってほしいと願う部分のスコアリングが低いこともありますよね。具体的には、インタースペースという会社の将来性は社員全員が感じてくれていたのですが、それをドリルダウンしていくと、5年後、10年後、自分がそこにいることを想像できるかというと、そこはやや不透明である、といったスコアリングがみられました。それは経営陣としては大変なショックでした。
5.~人事施策への思い~ 失敗を恐れずに、実行に移すことが肝要
- ― その結果を人事施策や経営判断に繋げようと努力されています。他社もこういった調査結果を活かそうと試行錯誤していますが、大変苦労されています。調査のみに終わらせないための、重要なポイントは何だと思われますか。
これは難しいですね。正解のポイントはよくわからない。ただ言えるのは、こうではないかなと考えることは誰もがすると思いますが、それを実際にやってみることではないでしょうか。サーベイ結果を見たうえで、こうしたらもっと良くなるのではないかとか、このポイントは改善する必要があるのではないか、ここにも影響があって良くなるとか、色々な角度から想像してみる。そして、それをやるか、やらないかだと思います。それが失敗したらゴメンナサイと、社員なり社長なりに包み隠さず言う。インタースペースのチャレンジという風土を未来に残し続けたいのですが、事業が全部成功することはあり得ない。失敗ありきの取り組みの中で、やるかやらないかが大切だと思います。もちろん場当たり的に何でもやるというのではなく、成功の確度を高める努力はし続けたい。それが外部の協力をもって高められるサーベイであり、今回のイー・ファルコン社との取り組みであったわけで、組織サーベイが経営判断の後ろ支えになっていたと思います。
― 結果が見えたことによって、考え方が変わったとのことでしたが、現場や経営層に何か変化がありましたか。
「変化」という表現がいいのか、「軸が研ぎ澄まされた」という表現がいいのか・・。どちらかというと、後者に近いかもしれませんね。経営者8人が揃った時に、この組織をよくする方向の議論の中で、何を大切にしたいかということが、1回目、2回目と時間を重ねる中で強くなってきている実感があります。変化の速いものを受け入れようとするとキャッチャーミットは広い方がいいかもしれませんが、人や物事はキャパシティがあるので、ミットの中で何を受け止め、何を受け止めないかという識別が必要です。その見極めラインがサーベイとトライ&エラーを繰り返していく中で、自分たちが今、受け取るべきものと、ここはいったん受け止めずに進もうよというものの線引きが年々明確になってきていると思います。 ただそのラインが、未来、自分たちがなりたい姿に対しての判断として良かったかどうかは、また5年後あるいは10年経った時に結果が出てくるのではないでしょうか。
6.~展望とイー・ファルコンへの期待~ 変わるための意識醸成から行動していくフェーズへ
- ― イー・ファルコンに対する印象と期待を改めてお伺いします。
ありきたりの表現ですが、イー・ファルコンは、お客様をよく見てくれているなというのを感じます。打ち合わせやサーベイを作る設計の中でも、何気なく言ったフレーズをきちんと反映させてくれたり、逆にこういうかたちで反映させるとサーベイとしての効果が良くなるという提案をいただいたりします。そもそもイー・ファルコンを選んだ背景は、単なるサーベイの集計だけではなく、簡単には見えない因果関係もきちんと分析して結果を跳ね返してくれるところであり、それが我々にとって大きな魅力のポイントです。今後は、結果の精度や分析の確度が更に研ぎ済まされていくことを期待しています。
― 人と組織も含めて、平野さんなりの今後の課題を教えてください。
具体的な施策の中身というより、インタースペースの10年ビジョンの中で、チェンジフェーズ、チャレンジフェーズ、コンプリートフェーズと、フェーズを大きく3つに切り分けているのですが、今年がまさにチェンジフェーズの最後の一年になります。次のフェーズに移ると、より具体的な行動を想像しますし、僕ら経営陣も今までの変わっていこうよというメッセージの発信から、より変わるための行動や変わっている部分の結果が社員からも求められると思います。意識から行動への比重の置き方が今後は大きく変わっていくと思いますし、まさに次のフェーズに向かう途上にもいる状態だと思います。 ただそのラインが、未来、自分たちがなりたい姿に対しての判断として良かったかどうかは、また5年後あるいは10年経った時に結果が出てくるのではないでしょうか。
― 最後に、経営や人事にかかわる担当者の方々へのメッセージを一言お願いします。
とかく人事や経理・管理部門というのは失敗してはいけない場所、無意識に失敗しないのが当たり前と思っている風潮があるように感じています。ただ、組織を変えるとか、文化を変えていくというのは、一つの正攻法、正解論で物事が成り立つわけではないので、失敗は大小あっても行動してみるのが大切だと思っています。インターネット業界、ウェブ業界を見ると、僕ら以上に失敗を恐れずに組織改革、制度改革に取り組んでいらっしゃる企業が多くあって、そういうアクティブな会社は業績も成長しています。経営や人事に関わる一人として、各社の姿勢は見習いたいですし、本当に大切にしたいと思います。
そうなると、失敗ではなく、成功の確度を引き上げる努力は重要なので、集計と因果関係分析の2つのパッケージがセットになっているイー・ファルコンの組織サーベイは欠かせませんね。もちろん、このサーベイの取り組みと同時に、もう一方で常になくてはならないのが自分たちの目的であり、それが同時に存在することによって目指す組織に近づいていくのだと思います。