労働人口の減少によってますます人材の確保が難しくなる中、採用以上に重要視されるようになっているのが「退職防止」です。
優秀な人材の早期離職は、採用・育成コストの損失だけでなく、チームの士気にも影響を与える恐れがあります。
社員の退職を防止し、定着率を高めるために企業が取り組むべき退職防止の対策について解説します。
企業の安定した成長を図り競争力を維持する上で、退職防止の施策は不可欠です。
社員の退職が続くと、採用や教育にかけた費用が無駄になるだけでなく、組織全体の士気やパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
また、社員の入れ替わりが激しくなると、退職が多いことが顧客や取引先にも伝わるため、企業の信用低下やブランドの毀損にもつながります。
人材が定着しない組織では、ノウハウやスキルが蓄積されないため、生産性の向上も図れなくなり、ますます人手不足の影響が大きくなってしまうでしょう。
残された社員の業務負担が増大し、退職の連鎖につながらないよう、退職防止を人事部門の課題としてではなく経営課題としてとらえ、早急かつ多角的に取り組むことが求められます。
企業がとるべき退職防止の施策は、抱える課題によってさまざまです。
退職防止の代表的な施策について確認していきましょう。
社員が長く働き続けるために前提としてなくてはならないのが、働きやすい環境です。
具体的な施策としては、リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方の導入、快適なオフィスの整備、ハラスメント防止対策の強化などが挙げられます。
こうした環境整備を行うことで、就業中のストレスや不満を減らすことが、退職防止の第一歩になります。
上司や同僚との円滑なコミュニケーションは、社員間の信頼感や安心感を高め、仕事へのモチベーションや満足度を高める上で不可欠です。
定期的な1on1ミーティングやチームミーティングによる情報や目標の共有、社内SNSや社内イベントによる部署を超えた交流の活性化などが、具体的な施策として挙げられるでしょう。
孤立感がなく心理的安全性が確保されている職場では、社員が自分の意見を出しやすくなり、仕事への満足度も高まります。
社員が安定した生活を送るためには、報酬や福利厚生への納得感も非常に重要です。
成績や貢献度に見合った給与体系やインセンティブ制度を設けることで、評価とのギャップによる不満やモチベーションの低下を防げます。
さらに、育児・介護休業やリフレッシュ休暇などの福利厚生を充実させることで、ライフステージの変化による退職を防ぐこともできます。
不透明な評価制度は、社員にとって不公平感や不満の要因になるため、仕事のどのような部分が評価され、どの程度の昇給・昇格につながるのかを明確にする必要があります。
また、評価の過程で適切なフィードバックを行うことにより、社員が成長の実感を得やすくなり、仕事への意欲も高まります。
公平で透明性のある評価制度を設計するために、基準の明確化や評価プロセスの公開、評価者のトレーニングなどに取り組みましょう。
キャリア支援が不十分で、社員が将来のキャリアに希望や展望を持てないと、転職を考えるようになるため退職の増加につながります。
キャリア面談やスキルアップ研修、社内公募制度などを導入して、多様なキャリアパスを描ける環境が必要です。
自分の成長が実感できる企業であることが、社員の定着意欲を高め、退職の防止につながります。
企業が退職防止のための代表的な施策を取り入れても、状況によっては不十分な場合もあります。代表的な施策の他に、企業が自社の状況に合わせて検討すべき、応用的な退職防止策を紹介します。
代表的な施策を取り入れても退職が減らない場合、退職を考えている層に施策がマッチしていない可能性があります。
まずは過去の退職者の年齢、職種、入社年次別などから傾向を分析し、自社で退職しやすい傾向を持つ層を特定しましょう。
退職のリスクが高い層が特定できたら、その層に的を絞った効果的な施策を打つことが大切です。
若手社員の退職が多い場合は、1on1ミーティングやメンター制度による成長・定着支援のほか、ワークショップやセミナーなどで自身のスキルや強み、希望職種を棚卸しする機会を提供することで、キャリアの不安を解消するとよいでしょう。
中堅社員の退職が多い場合は、昇進・昇格条件の明示により昇進意欲を高める施策や、サブマネジメントロールの導入により正式な管理職ではなくても役割を割り当ててやりがいを高める施策を検討してみましょう。
退職を防ぐためには、社員の退職の意向が強まる前に「仕事で何に困っているか」「どのような部分が足りないか」をすくいあげ、対策を打つ必要があります。
評価・査定面談などとは別に、1on1形式で定期的にヒアリングをおこなったり、アンケートを実施したりして、「辞めたい」といわれる前に聞くことが大切です。
ヒアリングの結果によっては、異動・配置転換の柔軟な運用や、社内副業・越境学習の導入などにより、退職しなくてもキャリアチェンジや新たな挑戦をする機会を設けるとよいでしょう。
早期離職を防ぐためには、採用段階からミスマッチを防止する施策も重要です。
自社のカルチャーにマッチする人材や、定着して活躍している人材と共通する特徴があるかを適性検査で分析したり、インターンを実施して実際の職場や仕事を入社前に知ってもらったりすることで、ミスマッチを減らし定着率を向上できるでしょう。
退職防止のためにさまざまな施策を講じているにも関わらず退職が減らない場合は、施策の内容や課題の本質を見直す必要があります。
退職防止に取り組んでも退職が減らないときの対策を見てみましょう。
退職が減らない場合、現在の退職防止策が表面的な対策になっていないか、社員が実際にメリットを感じているかについて検証する必要があります。
1on1ミーティングは実施しているが、上司と部下の間に信頼関係がなく浅い内容になっている、福利厚生の内容が社員の需要とズレているためにほとんど利用されていないなど、見直すべき点がみつかるでしょう。
施策ごとの質や実行度、社員の受け取り方について、アンケートやヒアリングを通じて検証し、柔軟に改善していくことが大切です。
退職防止のための制度がどんなに整っていても、それを実行するマネジメント層の考え方やコミュニケーションに問題があると、人材の定着に結び付きません。
マネジメント研修でコミュニケーション力やフィードバックスキルの向上を図ったり、評価制度に部下の定着・育成も組み込んだりして、マネジメント層の育成やサポートを強化することで、退職防止策の実行度や効果を高めましょう。
長期にわたって退職が続く場合、そもそも経営や組織文化の根本に原因がある可能性も考えられます。
企業のビジョンや方針に共感できないと、社員が働き続ける意味を見失ってしまうため、
目先の売上ばかりで社員の成長が軽視されていないか、経営陣と現場との間に大きな温度差がないか見直してみましょう。
見直しのあとも、経営層が定期的に現場にメッセージを伝える機会を設けるなどして、ビジョンや方針を浸透できるよう取り組む必要があります。
退職を考えるほど現在の職種や環境に不満がある場合は、退職前に他の職種や部署で再チャレンジできるよう選択肢を用意することで、退職を防止できる可能性もあります。
社内副業やキャリアシフトの導入を検討するほか、配属や異動の判断に適性検査を活用することで、社員がより活躍できる環境をみつけることもできるでしょう。
アルムナイ制度(再雇用)を用意しておくことで、一度退職した社員とつながり続けることも、採用コスト削減や企業イメージの向上には効果的でしょう。
退職防止の対策は多岐にわたり、職場環境や退職者の多さなど状況によって最適な施策は異なります。
退職防止のさまざまな取り組みをより効果的に行いたいときには、適性検査を活用するのも一つの方法です。
採用だけでなく、配属、育成、登用などにも役立つ適性検査「eF-1G」なら、採用ミスマッチの防止、マネジメントの個別最適化、定着している社員の傾向分析など、さまざまな退職防止策の質を高めることに貢献できます。
効果的な退職防止策の策定に適性検査を活用するなら、ぜひ一度「eF-1G」をお試しください。