人事部の資料室

スタートアップの採用に必要なのは「候補者の過去ではなく未来を見透す力」

作成者: e-falcon|2024/03/10

「採用が、なかなかうまくいかない──」
これは、拡大を目指すスタートアップが、共通して抱える悩みかもしれません。

時代は変わり、採用の風景も変化しています。現代は、“採用難”、“売り手市場” といわれ、多くの企業が、人材確保に苦心しています。

スタートアップにおいては、その影響はより顕著です。

そこで求められるのが、「候補者の過去ではなく未来を見透す採用力」といえます。

この記事では、スタートアップの採用に焦点を当て、いま何ができるか、具体的に考えていきたいと思います。

スタートアップのための未来志向の採用戦略

筆者自身、スタートアップの企業で、採用に関わってきました。

その経験から、「未来を見透して、ときにはパターンから外れた人材も大胆に採用すること」が肝要だと考えています。

ここでは、“未来志向の採用戦略” と呼ぶことにしましょう。

通常の採用方法との違い

通常の採用方法では、「経験」や「既存のスキル」が重視されます。

たとえば、以前の職務経験や特定の保有スキルが、評価の中心です。

しかし、スタートアップの採用では、「これらを求めすぎると、まったく人を採用できない」という現実に直面します。

大手企業や実績ある企業に比較すると、まだ採用競争力が弱いからです。

と同時に、「これらだけでは、不十分」という見方もできます。なぜなら、スタートアップは環境が常に変化し、柔軟性と革新的な思考が求められるからです。

未来志向の採用戦略で重視するポイント

未来志向の採用戦略で重視するのは、候補者の「過去」や「現在」ではなく「未来」です。

潜在的な成長可能性や創造性、新しい環境への適応力を、十分に見極めます。チームとの文化的な適合性も、採用の重要な要素となります。

以下は、筆者が在籍していたスタートアップで、採用プロセスで使用していた評価項目のイメージです。

  • 潜在的な成長可能性:学習意欲、創造的な思考(クリエイティビティ)、環境適応力などを確認し、どれだけの伸びしろを期待できるかを評価します。
  • 文化的適合性:価値観、個人目標とチーム目標の一致性などを確認し、チーム内での協力と調和の促進に貢献してくれる人材か、見極めます。
  • 柔軟性と革新性:困難な状況や変化にどのように対応するか、新しいアイデアや解決策をどのように提案するかを評価します。会社が直面する未来の課題に対応できる人材を探します。

短期的な成果より長期的なポテンシャル

一方、筆者自身が経験した失敗は、スタートアップが急成長する際に、即効性を重視して採用拡大したことです。

人材を育てる余力や時間がない状況では、それが最適解のように感じられました。

しかしながら、実際には、会社のカルチャーが崩れ、メンバーが見ている方向性がブレ始め、業績が低下して離職率が高まりました。逆効果だったのです。

この苦い経験から、短期的な成果よりも長期的なポテンシャルを重視する採用戦略へ、大きく舵を切りました。

結果は、こちらが正解でした。

成功するスタートアップには、組織の成長ステージごとに、伝説的なメンバーが現れるものです。

長期的なポテンシャルを重視した採用を続けた結果、会社の歴史に名を刻む貢献メンバーに、出会い続けることができました。

採用プロセスで未来を見透すテクニック

では、具体的にどのように、候補者の未来を見透せばよいのでしょうか。

ここでは、3つの方法をご紹介します。

  1. 未来の可能性を探るための質問
  2. 適性検査の実施
  3. ソーシャルメディアの活用

未来の可能性を探るための質問

1つめの方法は「未来の可能性を探るための質問」です。

未来志向の採用戦略では、候補者の過去の経験よりも、未来への可能性を知るための質問を増やします。

職種やポジションによって、何を聞くかは異なりますが、一例を以下にご紹介します。

  • 思考プロセスの理解:候補者が困難な状況をどのように分析し、解決策をどのように導き出すかを理解するための質問を行います。これにより、候補者の論理的思考力や問題解決力を評価できます。
    〔例〕「業績不振が報じられている○○を立て直すためには、どのような戦略を採るのがよいと思いますか?」

    ● 創造性の探求:新しいアイデアをどのように形成するかに関する質問を通じて、候補者の創造性や革新的な思考を評価します。これは、スタートアップにおいてとくに重要な能力です。
    〔例〕「将来、新しい市場を開拓するためには、どのようなイノベーションが必要だと考えますか?」

    ● 価値観と目標の一致:個人の価値観やキャリア目標が企業のビジョンや文化と、どのように一致するかを探る質問を行います。これにより、長期的な適合性を評価できます。
    〔例〕 「あなたの長期的なキャリア目標は何ですか?当社のビジョンや文化とどのように一致すると思いますか?」

    ● 対人関係スキルの評価:チームワークやコミュニケーション能力を測るための質問を行い、候補者がチーム環境でどのように噛み合うかを評価します。
    〔例〕「チーム内で意見の相違が生じた場合、どのようにして解決を図りますか?」

    ● 未来への適応力:変化する環境や新たな挑戦に対して、候補者がどのように対応するかを探る質問を通じて、適応力と柔軟性を評価します。
    〔例〕「5年後の業界の変化に向けて、あなたはどのようなスキルや知識を身に付けたいと考えていますか?」

適性検査の実施

2つめの方法は「適性検査の実施」です。

適性検査は、候補者のさまざまな側面を評価するための強力なツールです。

たとえば、論理的思考力、問題解決力、対人関係スキルなど、職務に必要な能力を多面的に評価できます。
*1
出所)適性検査 eF-1G(エフワンジー)
https://www.e-falcon.co.jp/ef-1g


面接の質問だけでは、どうしても生じてしまう「ムラ」を最小限に抑えるために、適性検査と併用することが役立ちます。

ソーシャルメディアの活用

3つめの方法は「ソーシャルメディアの活用」です。

海外では、LinkedInがビジネスSNSとして定着しています。

グローバルな採用活動であれば、候補者のLinkedInを確認することで、人物像や関心・経歴などを、多角的に捉えやすくなります。

日本でも、2022年8月に「日本での登録メンバー数が300万人を突破」とのプレスリリースが公開されており、利用価値は高まっているといえるでしょう。
*2

LinkedIn以外にも、YouTube・Instagram・Xなど、発信者として活動している候補者であれば、それらを通じて、より深く人となりを知ることができます。

さいごに

採用は、スタートアップにとって、成功への道を切り開く鍵です。

最後にひとつ付け加えるなら、人材を選り好みするのではなく、
「出会ったご縁のある人と、よりよく仕事をするための、会社側のスキル」
こそ、スタートアップが磨くべき力かもしれません。

一定の基準を持って採用活動を行ったなら、その後の成果は獲得した人材ではなく、会社に依存している点を、あらためて認識したいところです。

採用プロセスの核心は、優秀な人材を選ぶことではなく、出会った人材とともに成長し、企業文化を形成していくことにあります。

伸びしろの大きなメンバーと、お互いのポテンシャルを最大限に引き出し合いながら、会社の成長を実現していただければと思います。