「心理的安全性の低い職場」とは 特徴を知り新入社員の早期離職を予防しよう

    組織を生産的なものにする要素として、「心理的安全性」の重要性が指摘されています。

    心理的安全性とは、平たく言うとメンバーの前で間違いをしてしまったり、日本で言う「空気の読めない」発言をしたりしても、メンバーがそれを受け入れるという組織土壌のことです。
    「空気」を大事にしすぎるがあまりに、新しいものが生まれにくい日本では特に必要なものです。

    よって新入社員にもこうした土壌を提供することで、早期離職を防ぎたいものです。
    どのようにすれば良いのでしょうか。

    心理的安全性と新入社員のホンネ


    心理的安全性が担保された組織は、ひとりひとりが年齢や立場に関係なく「のびのびとしていられる」環境にあるとも言えます。

    ここで心理的安全性についておさらいしましょう。
    グーグルが示しているのは、このようなものです。

    心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。

    <引用:「『効果的なチームとは何か』を知る」グーグル(下線は筆者加筆)>
    https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

    新入社員の早期離職が課題になっているという企業は少なくないことでしょう。

    ソニー生命のアンケート調査では、驚くべき結果が明らかになっています。
    社会人1年生、2年生を対象に実施したものですが、最初に就職した会社にいつまで勤めていたいかたずねたところ、回答は以下のようになっています(図1)。


    (出所:「社会人1年目と2年目の意識調査2022」ソニー生命)
    https://www.sonylife.co.jp/company/news/2022/nr_220421.html

    社会人1年生では「定年まで働きたい」と考えている社員が多いものの、2年目になると「すでに辞めたい」という回答が最も多くなっているのです。

    社会人1年生でも「2~3年くらい」と考えている社員が多くなっています。最初から「長居するつもりはない」という意識が高いことがベースにあります。

    これは、少子高齢化に伴う人手不足により、若者の転職が比較的容易になったことが背景として考えられます。
    またキャリアアップ=転職、という考え方で、ひとつの会社にしがみつく必要はないという考えが浸透しているのです。

    新入社員世代の傾向を知る


    新入社員の考え方に上記のようなベースがある以上、離職防止のために企業としてはできる限りのことはしたいものです。上のグラフでは、2年目になって「大きな心変わり」が生じていることがわかります。

    企業からすれば、この心変わりをいかに防ぐかが重要な課題となります。そのためにも知っておきたいのが、若手の仕事に対する姿勢です。

    ソニー生命のこの調査では、社会人2年生に「仕事をする上で大切にしていること」についてこのような回答が得られています(図2)。


    (出所:「社会人1年目と2年目の意識調査2022」ソニー生命)
    https://www.sonylife.co.jp/company/news/2022/nr_220421.html

    「果敢にチャレンジする」よりも「絶対にミスをしない」ことのほうが大事であると考える2年生が多くなっているのです。
    しかし、入社2年目の社員がミスなしで仕事を進めていくことはほぼ不可能です。

    こうした意味でも、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だと信じられるかどうか」という心理的安全性を高めることは重要性を増していることがわかります。「ミスをしてもいいんだよ」「若い間は当然だよ」という環境を提供することです。

    入社2年目で転職はしたけれど・・・


    先述の通り、多くの若者が「絶対にミスをしたくない」と考えています。
    それだけでも大きなストレスの芽になっていることは想像に難くありません。
    そのプレッシャーを取り除くだけでも、劇的な効果が期待できるでしょう。

    筆者の友人である20代の男性は、ある大手量販店に就職しましたが、2年目になって退職しました。
    お客さまに感謝されたり先輩から褒められたりすることで大きなやりがいを感じて喜んでいただけに、筆者からすればあまりに突然の退職で驚きました。

    では、彼の内面ではどのようなことが起きていたのでしょう。

    聞けば、休暇を取りたいことを上司に言いにくい、自分がおかしいと思っていることが改善されない、自分のほうが売上を上げているはずなのに他の人のほうが優遇されている気がする、というような不満を持っていたのです。

    売上については若干の自信過剰もあるかもしれませんが、「ものを言いにくい」「言っても聞いてくれないだろうと感じる」「上司に対する不信」これらがストレスとして蓄積されていたようです。

    そして、将来性がありそうだという理由でIT業界に飛び込みました。
    今は研修中ですが、しかしすでに不満を溜めつつあります。

    研修での上司の教え方が、彼の言葉を借りれば「雑」だというのです。わからないことを聞きにくいのでやりづらい、といった不満がすでに表れているのです。

    「背中を見て育て」という若者時代を送ってきた世代からすれば、信じられないほど甘い、と感じてしまうかもしれません。辛抱が足りないと、若者の責任にしてしまうことも簡単です。しかしこれも、ひとつの現実です。

    本人にとっては、「ものを言いにくい」「わからないことを聞きづらい」心理的安全性が低い組織ということです。
    2社目に就職してもなお、ここは安心して身を委ねられない場所だと感じているのです。
    それでもスムーズに転職できたということは、先述したとおり少子高齢化に伴う人手不足の現代ならではかもしれません。

    新入社員の心理的安全性を高めるには?


    実は、「キャリアアップ」という言葉を隠れ蓑に、居心地の良い場所を求めて転々とする若者は少なくないと筆者は考えています。

    「石の上にも3年」という言葉は今時古いと思われることでしょうが、そう間違った認識ではないのではないでしょうか。ただ、これを説教しても解決にはなりません。

    ここで、新入社員の心理的安全性を高めるために企業ができそうなことを考えてみましょう。

    まずひとつは、ソニー生命の調査結果に「ミスをして落ち込んだ時にかけて欲しい言葉」というのがあります。下のようになっています(図3)。


    (出所:「社会人1年目と2年目の意識調査2022」ソニー生命)
    https://www.sonylife.co.jp/company/news/2022/nr_220421.html

    そして、その逆はこのようになっています(図4)。


    (出所:「社会人1年目と2年目の意識調査2022」ソニー生命)
    https://www.sonylife.co.jp/company/news/2022/nr_220421.html

    まず、心理的安全性を意識した声の掛け方が必要であることを、この調査結果は示唆しています。

    筆者は会社員時代、「質問しやすい場所」を与えるために、以下のような工夫をしたことがあります。
    「1年目2年目まではなんでも質問していい。でもそれ以降はあなたも先輩になるんだから知らないよ。だから今聞かないと損だよ」
    と、新入社員に宣言したのです。
    逆に「今のうちにたくさん質問しておかないと」と思わせることが目的です。

    そして、アイデアについては、自分が困った時は相手が新入社員であっても「助けて欲しい、何か良いアイデアはないか」と声をかけました。
    実際に新入社員の提案を放送に反映したこともあります。もちろん、「わざと」ではありません。本当に感心したからです。

    そのほかに、筆者なりに考える「心理的安全性の高め方」は以下のようなものです。

    ・同期生どうしが集まることのできる場所を提供する。
    ・SNSやLINEといった、若者にとってなじみのあるツールを取り入れる。
    ・日報を取り入れている企業の場合、新入社員のうちは1日一つ「質問」や「疑問に思ったこと」を記入させる。


    また、人事担当や上司は自分にも新入社員の時代があったことを思い出して接することも重要になるでしょう。
    どんな些細なことにも「共感」の姿勢を示し、「ここはあなたの居場所だよ」と安心感を持たせてあげる工夫が大事なことを、各種のデータは示しているのかもしれません。。
    ただそれだけでも、早期離職の予防には大きな効果があるでしょう。
    ぜひ、新入社員の離職防止と育成のために、参考にして下さい。

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    著者:清水 沙矢香
    2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
    取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。