テレワーク下では、若手のほうが「はたらく幸せ」の実感が低い? その理由とは


テレワークが浸透し、最近は入社式や新入社員研修までオンラインで実施する企業も出てきました。

通勤時間が減ったことでワークライフバランスが改善されたことに満足を感じる人もいれば、コミュニケーションの取りにくさにもどかしさを感じる人もいて、いまもメリット・デメリットの両方が存在しているようです。

ただ、これらは「物理的な要因」と言えます。

一方でテレワークが「はたらく幸せ」に繋がっているかどうか、という心理的な側面から見ると、新しい課題も浮かび上がってきそうです。

テレワーク実施率と継続意向


総務省の「令和3年版 情報通信白書」によると、テレワーク経験者の多くが、今後もテレワークを継続したいとの意向を示しています(図1)。

(出所:「令和3年版 情報通信白書」総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123420.html

若い人ほど継続したいという回答が多くなっていることがわかります。

そして、テレワークのメリットとして挙げられているのは以下のような項目です(図2)。

(出所:「令和3年版 情報通信白書」総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123420.html

最も多いのは「通勤時間が削減される」、ついで「好きな場所で作業をすることができる」「自分や家族のための時間をとりやすくなった」という項目が挙がっています。

こうした調査結果を見ると、「若い人は自分の時間を大切にする傾向があるから、テレワークで満足を得ている」ように感じられますが、気をつけなければならないのは、これらは「物理的要因」であるということです。

テレワークと「はたらく幸せ」「はたらく不幸せ」


パーソル総合研究所がテレワークについて、はたらくことの「幸せ」「不幸せ」という心理面を軸に調査したアンケート結果があります。

この調査ではまず、「はたらく幸せ」実感を以下の7つの因子に分解しています。

1)自己成長因子(新たな学び)
2)リフレッシュ因子(ほっとひと息)
3)チームワーク因子(ともに歩む)
4)役割認識因子(自分ごと)
5)他者承認因子(見てもらえている)
6)他者貢献因子(誰かのため)
7)自己裁量因子(マイペース)

といった具合です。

これら7因子にテレワーク実施がどのような影響を与えているかについてまとめたのが下の図です(図3)。

(出所:「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

すべての因子において、テレワーク実施者のほうが高いスコアになっていることがわかります。

そして、「はたらく不幸せ」実感についても7つの因子に分解し、テレワークの影響をまとめたものが下のようになっています(図4)。

(出所:「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

こちらには、若干のばらつきがあるようです。

個別に見ると、自己抑圧、オーバーワーク、疎外感といった項目で、コロナ禍前と変わらない、あるいは悪化しているのです。

意思疎通の不便さが背景にあると考えられます。それゆえ、特にマネジャー層ではオーバーワークになりがち、と推測することもできます。

年齢別に見た「はたらく幸せ」実感の特徴


じつは、上記の因子を年齢別に見ると、興味深い結果が得られています(図5)。


(出所:「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

「はたらく幸せ」実感に関する因子が、20代の社員で特異的にスコアが低い水準にあるのです。
中でも「チームワーク因子」と「他者貢献因子」ではマイナススコアとなっています。この2項目については、出社組のほうが幸せを感じているということです。

これには、別の調査でわかっているテレワーク中の不安項目が大きく関係していると考えられます。

テレワーカーが本来的に感じている不安


パーソル総合研究所の別の調査では、テレワーカーの心理について分析しています。
その結果、テレワーカーはこのような不安を抱えていることがわかっています(図6)。

(出所:「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/news/202006100001.html

多くなっているのは「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないかどうか」「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくくて不安」という内容です。

特に「さぼっていると思われていないかどうか」という不安は、年長者より、仕事の裁量感を掴めていない若者のほうが抱きやすいことは想像に難くありません。
上記20代の「はたらく幸せ」の中で、「チームワーク因子」と「他者貢献因子」が出社組よりも低い水準にあるのは、こうした不安がベースになっていると考えられます。

特に入社したての社員の場合、社会人という未知の世界の中で必要なのは同期生や上司と直に触れ合うことが心の支えになります。また、仕事の「やりがい」は、若いうちは相手が喜ぶかどうか、という他者の反応でしか認識しにくいのも若手の特徴でしょう。

若手のモチベーションを支える屋台骨が、テレワーク下では揺らいでしまうのです。

そして、これらの不安は転職意向にも大きな影響を及ぼしています(図7)。

(出所:「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」パーソル総合研究所)
https://rc.persol-group.co.jp/news/202006100001.html

離職防止のためにも、テレワーカーの心理的な側面を注視する必要があるのです。

安心できる場所を提供できるかどうかがカギに


では、どのようにすればこれらの不満や不安を払拭できるのでしょうか。

ひとつの事例としては、サイボウズの手法があります。
サイボウズは社内のチャットツールに多くの「スペース」を設置しています。部門ごとであったりプロジェクトごとであったり、というところまでは想像がつきますが、特徴的なのは「分報」と呼ばれるスペースです*1。

ここでは「疲れた」「お腹減った」というだけの「つぶやき」を投稿することができるのです。自宅ではなかなか返事をもらえないつぶやきですが、このスペースでなら、「私も」といった返事がきそうです。
不特定多数の空間に向けてつぶやき、同意を得られる仲間ができていく。若い世代が好むTwitterの世界そのものです。

また、どの社員もスペースを立ち上げることができます。よって、例えば同期生だけ、あるいは部署は違っても仲の良い人だけを集めたグループチャットを作成できるのです。
近しい人と不満や不安を共有できるだけで、大きく救われることはよくあるものです。

今は多くはありませんが、「タバコ部屋」のようなものです。
筆者も会社員時代はヘビースモーカーでしたが、「タバコ部屋」はリフレッシュスペースであるとともに良い雑談の場所でした。タバコを吸わない人には実感しにくいかもしれませんが、「喫煙者である」という仲間意識は部署も年齢も飛び越えます。

そこで、直属の上司ではなくても普段聞きにくいことを質問できる相手ができる場所でもあります。こうした年長者からのアドバイスは、若手に自信と方向性を与えてくれることでしょう。

テレワークの良い面を生かし、不足する一面を補う考え方として、参考にしてはいかがでしょうか。

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著者:清水 沙矢香
2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

*1
「テレワークの教科書」サイボウズチームワーク総研 p130、p157