「面接で本質に迫るのは難しくなっている」直面する問題と3つの解決策

    人権意識の高まりとともに、「公正な採用選考」に対する社会のニーズが強まっています。

    面接のあり方にも、変化が生じています。応募者の内面に踏み込む質問はしにくくなり、「応募者の本質に迫ることの難しさ」を感じている方も多いのではないでしょうか。

    本記事では、おもに中途採用に携わってきた筆者の経験を踏まえ、現場で直面する問題とその解決策について考えたいと思います。

    今日における採用選考の難しさ


    大前提として、人権意識を高めること、および適切な理解と認識に基づく採用選考の実践は、企業の果たすべき役割です。

    と同時に、SNSでの拡散・炎上が日常的となった昨今では、ひとつの間違いが企業価値の著しい毀損を引き起こすリスクがあり、今まで以上に慎重な姿勢が求められます。

    面接でしてはいけない質問

    前知識として、採用選考で「就職差別につながるおそれがある14事項」を把握することは、不適切とされています。

    以下は厚生労働省のWebサイトからの引用です。

    ▼ 就職差別につながるおそれがある14事項

    (a)本人に責任のない事項の把握
    ・本籍・出生地に関すること(注1)
    ・家族に関すること
    ・住宅状況に関すること
    ・生活環境・家庭環境などに関すること

    (b)本来自由であるべき事項の把握(思想・信条にかかわること)
    ・宗教に関すること
    ・支持政党に関することの把握
    ・人生観・生活信条などに関すること
    ・尊敬する人物に関すること
    ・思想に関すること
    ・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
    ・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

    (c)採用選考の方法
    ・身元調査など(注2) の実施
    ・本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
    ・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

    ※これらに限られるわけではありません。
    (注1)「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します。
    (注2)「現住所の略図等」は、生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります。

    *1

    ※根拠・理由は「就職差別につながるとされる14項目」にて確認できます。

    ▼ 具体的なNG例
    ・「関西弁ですね!生まれはどちらですか」
    ・ 「頼れる長女気質という印象ですね。どんな家族構成でしたか」
    ・ 「転勤を考慮するために、持ち家や家族について教えていただけますか」
    ・ 「ご両親の影響を強く受けているんですね。どんなお仕事をされていたんですか」
    ・ 「将来的には独立を目指したいとのことですが、尊敬する人物を教えてください」
    ・ 「愛読書や、定期購読している雑誌はありますか」
    ・ 「几帳面な気配りがすばらしいですね。血液型はA型ですか」

    不適切な質問はハローワークから指導が入ることも

    企業の面接官としては、
    「リラックスしてもらうための雑談として」
    「会話のきっかけに聞いただけ」
    「適性を見極めるために、必要な情報だから」
    などの理由があるかもしれません。

    しかし、ひとたび尋ねて把握してしまえば差別につながる可能性があるため、話題に出すこと自体が不適切とされます。

    応募者が不適切な質問を受けた場合、ハローワークへの相談が促されており、ハローワークから企業へ確認や指導が入ることがあります。

    ※参考までに「家族に関することの質問をされた」という指摘が多く入っています。

    *2
    出所)厚生労働省「公正な採用選考を目指して | 採用選考時に配慮すべき事項」を元に筆者作成
    https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

    プライベートと応募者が感じる質問は回避傾向に

    前述の14事項は最低限配慮すべき事項といえますが、“実務上の配慮すべき範囲”は年々広がっている傾向です。

    筆者の肌感覚では、数十年前なら、面接でプライベートな質問をされても「内定を得るためには、企業側の意図をくんで答えたほうがよい」とする風潮がありました。

    しかしここ10年で、「踏み込んだプライベートな質問をする企業側がおかしい」と考える人が増えているように感じます。

    実際、筆者が採用活動に携わるなかで、人材紹介会社経由で辞退連絡とともに、
    「面接官からプライベートに関する質問をされたことがマイナスだった」
    とフィードバックを受けたことがあります。

    時代によって移り変わる応募者の感覚を捉え、企業の態度を柔軟に変容させる重要性を実感した出来事でした。

    現場で直面しやすい問題


    厚生労働省が啓発に努めているのは、「求人職種の職務遂行上必要な適性・能力」に基づく公正な採用選考です。

    ですが、実際には必ずしもその範疇に収まらない、さまざまな要素を総合的に評価して、採用を決めていることが多いのではないでしょうか。

    面接での情報収集がままならなくなると、さまざまな問題に直面します。

    悪意の応募者の見極めが甘くなる

    まず「悪意の応募者の見極めが甘くなる」ことが挙げられます。

    筆者が実務を通じて強く感じるのは、
    「応募者は、守るべき善意の人物だけではない」
    ということです。

    企業にとって好ましくない、何らかの意図を持って入社を試みる者もいます。

    新規取引先の信用調査を行って与信審査を慎重に行うのと同様に、入社する社員に対しても、信用してよい人物なのか見抜かなければなりません。

    「福利厚生狙いの不誠実な人物」といったレベルならまだ被害は少ないですが、悪質なケースでは、産業スパイや会社の乗っ取り画策での入社志願者もいます。

    採用プロセスで信用を見極めることは、ときに企業の存続にかかわるほど重要です。

    感覚的な判断に頼る部分が大きくなる

    次に「感覚的な判断に頼る部分が大きくなる」問題が起きやすくなります。

    質問スキル次第で応募者の本質を引き出すことは可能ですが、それができる面接官とできない面接官の差が大きくなるのです。

    人材不足にあえぐ中小企業では、現場マネジャーが業務の合間に面接をこなすことが多く、なかなか面接技術の向上まで回らないのが現実です。

    面接で核心を突く情報にたどり着けないため、応募者の評価を適切にできません。「1・2・3・4・5」の5段階評価なら「3(可もなし不可もなし)」が多くなる、中心化傾向が起きます。

    判断保留で次回面接に引き継いで、本来のフローより面接回数が増えてしまったり、最終評価は「社長の感覚」で決まったりします。

    結果として、“公正な採用”からも“高精度な採用”からも遠ざかり、ミスマッチによる離職が続発するのです。

    多角的に人物像を把握する3つの対策


    ではどう対策すればよいのかといえば、大切な視点は「複数の情報源を持つ」ことです。

    書類選考や面接に追加する情報源として、実務に即して有益だった対策を3つ、ご紹介します。

    適性検査の導入

    1つめは「適性検査」です。

    適性検査と一口にいってもさまざまなものがあり、
    「試しに導入してみたけれど、役立たなかった」
    という声も聞きます。

    ですが、潜在的な能力や適性を客観的なアプローチで評価できる点は、新たな情報源として優れています。

    「当たるか、外れるか」という観点ではなく、「心理学や統計学に基づくとどうか?と情報視点を増やすこと」に利用価値があるのです。

    意思決定の精度を上げるためには、「複数の情報を組み合わせて答えを出すこと」が不可欠となります。そのひとつの情報として活用すると、適性検査の効果を実感できるはずです。

    リファラル採用

    2つめはリファラル採用です。

    自社の社員などに紹介してもらった候補者に対し採用選考を行うリファラル採用は、前述の“悪意の応募者の排除”という意味で、大きな効果が期待できます。

    リファラル採用だからといって100%信用できるわけではありません。ですが、「信用できる人物とつながっている人物」と範囲が限定的になることで、リスクを大幅に軽減できます。

    紹介者からの情報によって、人柄などに関する情報を得やすいのもメリットです。

    人材紹介会社からの情報提供

    3つめは人材紹介会社からの情報提供です。

    企業へダイレクトに応募のあった選考プロセスに比較して、データベース化された情報の効率的な提供を受けられる点は、人材紹介会社を活用する意義といえます。

    応募者と企業との間で、コミュニケーションの橋渡し役として機能してもらえれば、繊細なニュアンスも含めて、応募者の様子を読み取ることが可能です。

    さいごに


    本記事では「面接だけで本質に迫る難しさ」をテーマに取り上げました。

    筆者の個人的な考えとしては、面接によって応募者の適性や能力を見極めることには限界があると感じます。不可能ではありませんが、そのためのトレーニングコストが必要です。

    面接は、人と人が初めて出会って言葉を交わす純粋なコミュニケーションの場として機能させ、適性や能力は、ほかのツール(適性検査や課題提出など)へ集約させる仕組みができないだろうか、と考えているところです。

    企業にとっても応募者にとっても、よりよい採用選考の形を模索できればと思います。

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    著者:三島 つむぎ
    ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

    *1
    出所)厚生労働省「公正な採用選考を目指して | 採用選考時に配慮すべき事項」
    https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

    *2
    出所)厚生労働省「公正な採用選考を目指して | 採用選考時に配慮すべき事項」を元に筆者作成
    https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html