採用面接でしてはならない不適切な質問とは? 会社側が注意すべきポイントを弁護士が解説

    企業が新卒採用・中途採用の面接を行う場合、候補者に対してすべきでない不適切な質問があることに注意が必要です。
    採用面接を担当する従業員に対して十分な研修を行うなど、採用活動の健全化に努めましょう。

    今回は、採用面接でしてはならない不適切な質問について、会社側が注意すべきポイントを解説します。

    1. 採用面接における不適切な質問とは?


    採用面接で行われる質問は、候補者の適性や能力を見極める目的で行われなければなりません。言い換えれば、それ以外の目的でなされる質問は不適切である可能性が高いというべきでしょう。

    特に、適性・能力以外の観点から、候補者の採否についての差別的な取扱いに繋がる質問は避ける必要があります。

    職業安定法3条により、企業が候補者の採否について差別的な取扱いをすることは、労働協約に別段の定めがある場合を除いて禁止されています。
    また、特に性別を理由として差別的な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法5条でも明文で禁止されています。

    このような差別的取扱いに繋がる不適切な質問をした企業は、厚生労働大臣による行政処分や行政指導の対象となり得るので注意が必要です(職業安定法48条の2、48条の3、男女雇用機会均等法29条、30条)。

    2. 採用面接における不適切な質問のパターン


    特に以下に挙げるパターンの質問については、候補者の差別的な取扱いに繋がるものとして、不適切と判断される可能性が高いでしょう。

    (1) 不適切な質問|本籍・居住地・住環境などに関する質問

    どの地域の出身か、どの地域に住んでいるかなどは、候補者の適性や能力を判断するに当たって必要がない情報です。

    しかしながら、出身地や居住地などによって「育ち」を推測するなど、偏見に基づく差別が現代でも根強く残っています。
    企業としては、出身地や居住地にかかわらず公正な選考を行うためにも、本籍・居住地・住環境などに関する質問は差し控えるべきでしょう。

    (例)
    ・本籍地はどこですか?
    ・ご両親の出身地はどこですか?
    ・どのような環境の地域に住んでいるのですか?
    ・自宅付近の略図を書いてください。
    など

    (2)不適切な質問|家族に関する質問

    家族構成や、家族の職業・地位・収入などに関する質問も、候補者の適性や能力とは全く関係がありません。

    企業としては、候補者があくまでも自分自身の取り組みによって、人格や能力を形成してきたことを理解する必要があります。家族に関する質問を不用意に投げかけることは、採用に関する不当な差別に繋がり得るのでご注意ください。

    (例)
    ・ご両親の職業、役職などを教えてください。
    ・ご家庭の収入はどのくらいですか?
    ・ご両親は共働きですか?
    ・どのような雰囲気のご家庭でしたか?
    ・(親と死別している候補者に対して)なぜ亡くなったのですか?
    など

    (3)不適切な質問|資産に関する質問

    候補者本人や家族がどのような資産を持っているかについても、候補者の適性・能力とは無関係の情報です。

    仮に候補者やその家族が貧しかったとしても、それは多くの場合、候補者本人の努力によって解決できる問題ではありません。反対に、候補者やその家族が裕福であっても、候補者本人の優秀さの裏付けにはなりません。

    資産に関する質問を不用意に行うことは、候補者本人の責任ではない事柄によって採否を判断することに繋がり得るため、避けるべきです。

    (例)
    ・住んでいる家は持ち家ですか? それとも賃貸ですか?
    ・ご両親は有名な地主なのですか?

    (4)不適切な質問|思想・信条・宗教・支持政党などに関する質問

    思想及び良心の自由や信教の自由は、日本国憲法によってすべての人に保障されています。したがって、候補者が内心でどのような思想や信条などを持っていても、そのこと自体に優劣評価を付けることはできません。

    このように、憲法で保障された個人の自由権に属する事柄を、採用選考において考慮することは人権侵害的な側面を持つため、企業は厳に慎むべきです。

    (例)
    ・ご実家の宗教は何ですか?
    ・神さまや仏さまを信じていますか?
    ・労働組合についてどのような意見を持っていますか?
    ・尊敬する人物は誰ですか?
    ・今の日本の政策についてどう思いますか?
    ・どのような団体に加入していますか?
    ・どの新聞を購読していますか?
    など

    (5)不適切な質問|交際・結婚・出産などに関する質問

    特に女性に対して、いわゆる「結婚退社」「寿退社」などを念頭に置いた質問を採用面接ですることは、男女雇用機会均等法で禁止されている性差別に繋がります。

    そもそも、交際ステータスや結婚や出産の意思などはプライバシー性の高い情報なので、採用面接で軽々しく聞くべき事柄ではありません。
    また、仮に結婚や出産を経験したとして、仕事とどのように関わるかは本人が自由に決めるべき事柄です。

    採用面接における交際・結婚・出産などに関する質問は、性差別に繋がる可能性が高い不適切な質問であると十分認識しなければなりません。

    (例)
    ・交際している方はいますか?
    ・結婚の予定はありますか?
    ・結婚、出産後も働き続けることはできますか?
    など

    3. 採用面接で不適切な質問をしないための対策


    採用面接において、候補者に対する不適切な質問が行われないようにするためには、採用担当者に対する情報のインプットと意識付けが重要です。
    また、候補者からのフィードバックを受け付けて、採用面接の実施方法の改善を図ることも考えられます。

    (1)採用担当者に対して研修を実施する

    採用面接を担当する従業員は、不適切な質問に関する正しい知識と理解を備えなければなりません。

    採用担当者に対しては、どのような質問が不適切に当たるのか、なぜ不適切な質問をしてはいけないのかなどについて、事前に十分な研修を行うべきでしょう。

    (2)採用面接のマニュアルを策定・周知する

    採用担当者向け研修の実施と併せて、採用面接に関するマニュアルを策定したうえで、採用担当者に対して周知することも効果的です。
    不適切な質問の例示なども含めて、採用面接を実施するに当たって注意すべきポイントをまとめ、採用担当者に熟読を促しましょう。

    (3)候補者からのフィードバックを受け付ける

    採用活動の改善を図るためには、実際に採用面接を受けた候補者に対して、会社について受けた印象などに関するアンケート調査を行うことも効果的です。

    もし不適切な質問が行われた旨のフィードバックがあった場合には、採用担当者を中心とした従業員にその内容を周知して、マニュアルを見直すなどの再発防止策を講じましょう。

    4. まとめ


    適性と能力を備えた人材を採用するには、企業が不当な偏見を持たずに採用選考を行うことが非常に重要です。
    そのためには、候補者の適性と能力に焦点を当てたものだけに質問を絞り、不適切な質問は徹底的に避ける姿勢が大切になります。

    採用活動を成功させることは、企業が長期的・安定的に成長を続けるために必要不可欠です。採用担当者に対する十分な教育訓練などを通じて、採用活動の改善に努めてください。

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    著者:阿部 由羅(あべ ゆら)
    ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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