ギスギスした職場をどうする?仕組みや心理学からアプローチした体験談

    「また今日も、オフィスのドアを開けるのは、憂鬱だ……」

    緊張と圧迫感が渦巻く空気、冷たくそらされた目、言葉なく乱暴な物音だけが響く室内──。

    ギスギスした職場は、それだけで、従業員にストレスを与えます。

    しかしながら、管理職やマネジャーがその事実に気づいて、なんとか取りなそうとするほど、空回りして状況が悪化することもあります。

    本記事では、筆者の体験談も踏まえながら、対処法について考えていきたいと思います。

    ギスギスしすぎてドアを開けられない職場で起きていたこと


    筆者自身、企業での勤務経験から、職場のギスギスした雰囲気が心に与える影響を痛感しています。

    朝、オフィスに早く到着しても、あまりに気が重すぎて、オフィスのドアを開ける気になれません。

    近くのカフェで時間をつぶし、始業時刻の直前ギリギリに滑り込む──、という毎日が続いていました。

    そんな職場で当時、何が起きていたのでしょうか。振り返れば、2つの特徴的なポイントがありました。 
    ギスギスした職場で起きていたこと

    社内政治と個人間の競争心

    1つめは、「社内政治と個人間の競争心」です。

    プロジェクトの割り当てや昇進などの重要な決定において、基準は設定されていたものの、
    「最終判断には、柔軟性を持たせる」
    という運用がされていました。

    その会社は、ある種のカリスマ性と行動力を持った創業社長によって経営されており、彼の嗅覚や直感も含めた “意思決定” に、大きなウェイトがあったのです。

    従業員の視座から経営判断を見ると、透明性が欠けて感じられることは、珍しくありません。

    「実績よりも、人間関係が決定に影響を与えている」と思えば、従業員の心には、不公平感が生じます。

    自分の努力が見過ごされた感覚が、会社との信頼関係を喪失させ、社内政治や個人間の競争を激化させていました。

    あふれ出る業務量と期待の不一致

    2つめは、「あふれ出る業務量と期待の不一致」です。

    端的にいえば、“多忙感が社内を覆っており、皆が忙しくて余裕がなかった” のですが、忙しい職場がすべてギスギスするか?といえば、そうとは限りません。

    “忙しくても楽しい職場” というのは存在します。

    それは、従業員が業務遂行にあたって抱いている「期待」と、得られる「報い」に、ギャップが生じていない職場です。

    ここでいう「報い」は、評価や昇格・昇給のほか、感謝されることや、労いの言葉も含みます。

    ギスギスする職場は、過剰な業務で忙しいうえに期待が裏切られ、悲しみと怒りの混ざった不満が、フロアに沈殿しています。

    これでは、ドアが重く開けにくくなるのも、無理はありません。

    ギスギスを“仕組み”で解決する試み


    その後、筆者がマネジメント側の立場で「ギスギスした職場」に対峙したときには、なんとか解消しようと試行錯誤しました。

    ギスギスした職場が、どれだけ従業員の心と頭脳にダメージを与え、生産性を奪うか、体感していたからです。

    実践し、効果的だった試みを以下にご紹介します。 
    効果的だった試み

    (1)会議やプレゼンを恐怖の時間にしない

    1つめは、「会議やプレゼンを恐怖の時間にしない」ための試みです。

    社内に派閥や対立が生じたとき、仲良くするように諭したり、食事の場などを設けて取りなすやり方もあります。

    ただ、それらの手法は、うまくいくケースといかないケースのバラつきがあるうえ、不発となれば悪化するリスクがあります。

    仕組みによって均一化した対応をしたいと考えていたので、社内会議やプレゼンテーションの “場のあり方” から、テコ入れすることにしました。

    その理由は、社内政治や個人間戦争の暗躍の場となるのが、会議やプレゼンだからです。

    ギスギスしている職場では、
    「毎週のプレゼンが、恐怖の時間」
    「批判の目にさらされて、胃が痛い」
    ……といった状況に陥っています。

    本来なら建設的な議論をすべき場が、“足の引っ張り合いのオンステージ” と化しているからです。ここを封じることで、仕組みとして、社内政治や行きすぎた個人間競争を鎮静化できます。

    具体的には、
    「フィードバックは建設的に」
    「相手の意見を否定しない」
    「話している人の目を見て、最後までよく聞く」
    「反対意見をいうときは代替案を出す」
    というようなルールを設定しました。

    以前の会議室には重苦しい雰囲気が満ちていましたが、徐々に、笑い声も起きる柔らかく活発な様子へ、変わっていきました。

    「“職場”の雰囲気を改善する」のは、どこから手を付けていいのか、難しいものです。

    そこで、「“会議”の雰囲気を改善する」と範囲を限定して実行すると、効率的に社内へ伝播させやすいと感じています。

    (2)認められたい願望をきちんと満たす

    2つめは、「認められたい願望をきちんと満たす」ための仕組みです。

    私たちは皆、“認められたいという願望” を持っています。

    従業員のはたらきを適正に評価する人事評価制度を確立して、透明性を向上させると同時に、
    「努力や成長を、お互いにたたえ合う」
    というカルチャーを、社内に醸成することを目指しました。

    具体的には、「直属の上司ではない、他部署のマネジャー」の立場から、すべてのメンバーにローテーションで声掛けが行われるように、各部署のマネジャー間で仕組みを作りました。

    この仕組みは、「アプリシエーションサイクル(感謝サイクル)」と呼んでいました。

    アプリシエーション(appreciation)には、骨折りや苦労などに対する感謝、ありがたく思う気持ちというニュアンスがあります。

    たとえば、カスタマーサポートをがんばっているスタッフに、マーケティング部のマネジャーが、
    「いつもお客様のために、すばらしい対応をありがとう」
    と声掛けします。

    直属の上司から得る評価とは別に、
    「自分の努力を、見ていてくれる人はいる」
    と知る体験は、仕事に真摯に取り組む人にとって、この上ない報いです。

    (3)社内で心理学的なアプローチを学ぶ

    3つめは、「社内で心理学的なアプローチを学ぶ」仕組みです。

    半年に1回ほど、そのときの社内の様子に合わせて必要なテーマを決め、ワークショップを行っていました。

    「社内全体で、特定の課題に向き合う時間を作れる」というだけでも有意義ですが、その課題の解決に直結するスキルやノウハウを全員で学ぶことで、価値観の足並みをそろえやすくなります。

    具体的には、以下のようなテーマが挙げられます。

    • アサーション:自分の意見を伝える一方で、相手の気持ちや感情も尊重するバランスの取れたコミュニケーションスキルを学びます。
    • アンガーマネジメント:怒りの感情を認識し、適切に表現する方法を学びます。感情的な衝突を避けて、建設的な解決をしやすくなります。
    • マインドフルネス:“今この瞬間”に集中することで、過去や未来に気を取られることなく、ありのままを捉えられるようになります。ストレスを減らし、集中力を高めるのに役立ちます。
    • コンフリクトマネジメント:対立を建設的に解決するためのスキルを学びます。職場の調和を保ちながら、生産性を高めることを目指します。

    ワークショップの後には、明らかに社内の空気感が変わる実感がありました。

    社内の現状やニーズに応じて適切なテーマを選定し、必要であれば講師に依頼するなどして実施すると、より有意義な時間となるでしょう。

    さいごに


    職場のギスギスした雰囲気を改善することは、容易ではありませんが、きわめて重要な仕事です。

    また、「職場の空気をよくしよう」と尽力していると、それこそ「見てくれている人はいる」と感じます。

    筆者自身、この記事を書きながら、かつての上司や先輩や同僚たちのことを思い出しました。

    ピエロのように面白キャラを演じてくれた上司、いつも差し入れをしてくれた先輩、常に認めてたたえてくれた同僚──。

    職場の雰囲気がよくなれば、従業員の人生にも、温かな光が差し込みます。温かな光のもとで生まれた製品・サービスが、世の中に受け入れられないはずがありません。

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    著者:三島 つむぎ
    ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。