インターンシップで見つけた優秀な人材 どう繋ぎ止めて入社してもらう?

    就職活動の一環として、多くの学生がインターンシップに参加しています。
    インターンシップは企業にとっても優秀な人材を見つける良い場所であり、良い人材を見つければ当然そのまま面接を受けてもらい、自社に入ってほしいと考えます。

    しかし、インターンシップから実際に面接が始まるまでには長い期間があります。

    その間、関係を維持し続けるにはどのような工夫をすれば良いのでしょうか。
    また、インターンシップをきっかけに入社した社員の早期離職を防ぐことはできるでしょうか。

    学生のインターンシップ満足度


    「キャリタス就活」などを運営する株式会社ディスコの調査によると、学生のインターンシップ参加率は増え続けています(図1)。

    図1:学生のインターンシップ参加率
    (出所:「2023年卒特別調査 インターンシップ特別調査」株式会社ディスコ)
    https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/internshipchosa_202204.pdf p1

    この10年で、インターンシップ参加の必要性に対する学生の意識は大きく変わっているようです。

    そして、インターンシップによってその企業に就職する気持ちは高まったか?という質問への回答は、このようになっています(図2)。

    図2:インターンシップ参加前後の学生の意識変化
    (出所:「2023年卒特別調査 インターンシップ特別調査」株式会社ディスコ)
    https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/internshipchosa_202204.pdf p7

    「この企業に就職したい」と考える学生の割合がインターンシップ参加前よりも参加後に大きく増えていることは、インターンシップ実施の有効性を示しています。

    しかし、人事担当としてはその先に課題を感じていることでしょう。
    直後に「この企業に就職したい」と考えたとしても、実際に入社してくれるか、その後の離職を防げるか。
    就職活動中の学生が接する情報は膨大で、かつ人手不足が続く状況では、インターンシップの成否だけではなんとも言えないからです。

    インターンシップからの学生採用を成功させている事例


    そこで、インターンからの学生採用を成功させた事例をご紹介します。

    入り口を絞り込み、経営陣みずから丁寧に囲い込む

    ひとつは、食品EC会社であるオイシックス・ラ・大地株式会社です。
    2018年以降、新卒は自社の長期インターン経験者のみを採用するという方針を取っています。

    インターンについてあえて大々的に広告はせず、マッチングサイトなどで自ら探し出してきた意欲の高い学生を選抜し、インターンシップに参加させています。

    そして参加者の意欲の高さの分、給与を支給して実務経験を積ませるほか、メンターをつけて社員さながらの教育をしていきます。毎日1on1を実施し、実務面でのフィードバックを与えているのも特徴です。

    インターン終了後もユニークな対応を取っています。優秀な人材には経営陣がみずから直接会う機会を設けているのです(図3)。
    少数参加に絞っているからこそ可能なことと言えるでしょう。

    図3:オイシックス・ラ・大地のインターンシップの特徴
    (出所:「学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果についての検討会 企業に対するヒアリング調査結果」経済産業省資料)
    https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/PDF/04_R1_kigyou.pdf p9

    その結果、一度大企業に就職しても、数年を経て中途入社で戻ってくる人材もいるのです。
    なお、2018年、2019年度の長期インターンシップ経験者の離職者は0名でした*1。

    クライアントからのフィードバックで理解度向上

    また、株式会社昭栄美術では、クライアントの協力も得たインターンシップを提供しています。

    インターンシップで扱うテーマは現実にクライアントから受けた課題です。
    そして、協力会社やクライアントからのフィードバックを受けられるという就業体験そのものを経験できることで、業務や業界に対する学生の理解度が深まっています(図4)。

    図4:昭栄美術のインターンの特徴
    (出所:「学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果についての検討会 企業に対するヒアリング調査結果」経済産業省資料)
    https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/PDF/04_R1_kigyou.pdf p21

    そして、短期インターンをインターバルをおいて繰り返し実施、結果的には長期インターンになるという方法を取っています。
    インターバル期間に学生同士、あるいは学生と社員の間で使えるコミュニケーションツールを使い、じっくりと母集団を形成していくのです。

    長期インターンが難しいという事情のなかでも、数日単位のプログラムを継続的に実施する形は日本の制度になじみやすい面もあるでしょう。

    結果、インターンシップ参加者は未参加者と比べて内定辞退率が低くなっています*2。

    早期アプローチが就職エントリーの決め手にも


    上記の事例から言えることは、インターンシップでの濃い体験とその後の密な関わりです。特に「フィードバック」の重要性を感じます。

    ところで、インターン終了後の参加者への素早いアプローチも大切なようです(図5、6)

    図5・6:インターン参加後のアプローチとエントリーの有無
    (出所:「2023年卒特別調査 インターンシップと食う別調査」株式会社ディスコ)
    https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/internshipchosa_202204.pdf p9

    多くの企業が「インターンと採用は別過程」としていますが、実際には早期選考などのアプローチを実施しているのです。

    門戸を広げるために「インターンと採用は別」というのは一見きれいな話に見えますが、では、企業はボランティアでインターンを実施しているのか?ということになってしまいます。
    ここでは先述のオイシックスの事例のように、エントリーにはインターン参加必須であることをあらかじめ宣言し、かつ自社に深い関心を持つ学生に最初から対象を絞り込むという手法は効率的でしょう。

    インターンでの印象が採用に影響しないわけがありません。そこを隠すことが優秀な人材の囲い込みに必ずしも良い影響を与えるとは思えません。意識のそう高くない学生を数呼んだところで、学生はどこまで実力を発揮しているかわかりませんし、相手が多すぎるとアフターフォローは薄いものになってしまいます。

    通年採用の「ユニクロパスポート」


    また、これはインターンシップの話ではありませんが、ユニクロでは一風変わった方法で学生と接しています。「ユニクロパスポート」という制度です。

    ユニクロは採用面接を学年問わず受けられるようにしており、「ユニクロパスポート」は会社説明会→WEB適性検査→面接(複数回)→本部セッション、とここまでの選考を通過した人に発行されます。
    そして発行から3年以内であれば、いつでも最終面接を受けられるというシステムです。ひとつの担保のようなものをもらい、その後安心してやりたいことに打ち込めるという設計です。

    学生の就職活動は多忙を極めています。また、様々な統計を見ていると、近年の学生は入社後すぐに役に立ちたい、と考える傾向があるように思われます。インターンシップの内容も重視されます。しかし内閣府の資料によると、日本のインターンシップには下のような傾向があるといいます(図7)。

    図7:日本で実施されているインターンシップの類型
    (出所:「日本の新卒採用市場の真の課題は何か?」内閣府資料)
    https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg4/koyo/160209/item2.pdf p20

    「社員同等」「社員補佐」「プロジェクト型」のインターンシップは少なく、「ジョブシャドウ(学生が社員について回って仕事を知る)」型であったり、「疑似体験」に止まっていたり、「会社見学型」になってしまっているというのです。

    これらの手法では、「業界」に興味を持つことはあっても、「この企業で働くとどうか」ということについての実感は湧きにくいものです。

    インターン受け入れ段階から「メンバーである」との実感を


    ここまでさまざまなデータや事例をご紹介してきましたが、必要なのはまずインターン中にいかに会社のメンバーとして扱うかということです。「楽しかったなら良かった」というのではなく、評価やフィードバックまでも実施することです。
    受け入れるからには「疑似体験」や「会社見学」で終わらせないことが重要です。

    また、アフターフォローが必要なのは当然のことですが、その手段を工夫する必要がありそうです。
    経営陣が自らアプローチを続ける、就職活動中になんでも相談に乗れるようなコミュニケーションツールを利用する。
    インターンシップ中もその後も「会社のメンバー」として扱うことが、人材を手放さないために打てる手のひとつです。

    wp01-2

    お役立ち資料のご案内

    適性検査eF-1Gご紹介資料

    ・適性検査eF-1Gの概要
    ・適性検査eF-1Gの特徴・アウトプット
    ・適性検査eF-1Gの導入実績や導入事例

    ≫ 資料ダウンロードはこちら
    著者:清水 沙矢香
    2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
    取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

    *1、2
    「学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果についての検討会 企業に対するヒアリング調査結果」経済産業省資料
    https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/PDF/04_R1_kigyou.pdf p10、p22