Z世代とのエンゲージメントを育む。新卒採用における「対話」のデザインとは
新卒採用の面接で、学生との間に見えない壁を感じることはありませんか。「本音で話してくれていない気がする」「どうすれば自社の魅力が本当に伝わるのだろう」――。
多くの採用担当者が、Z世代と呼ばれる学生たちとのコミュニケーションに、これまでにない難しさを感じています。
その悩みの背景にあるのは、彼らが持つ特有の価値観や仕事観と、これまでの採用コミュニケーションとの間に生じた「ズレ」です。このズレを放置すれば、内定辞退や入社後の早期離職といった、企業にとって大きな損失に繋がりかねません。
本記事では、その「ズレ」を解消し、Z世代から「この会社で働きたい」と心から思ってもらうためのコミュニケーション術を、「情報提供」「対話」「フィードバック」の3つの視点から具体的に解説します。
なぜ今、Z世代とのコミュニケーション見直しが急務なのか?
Z世代の価値観を理解する上で、「リアルさ・透明性」「共感・パーパス」「個の尊重」「成長実感」「タイパ(タイムパフォーマンス)」といったキーワードは欠かせません。彼らは、企業が発信する美しく整えられた情報よりも、その裏側にあるストーリーや、社員のリアルな声に強く惹かれます。
そして、自分の仕事が社会にどう貢献するのかという「パーパス」に共感できるかを重視し、組織の一員である前に、一人の「個」として尊重されることを望んでいます。
こうした価値観を持つ彼らにとって、一方的な会社説明や画一的な選考プロセスは、魅力的どころか、むしろ「自分には合わない」と感じる要因になり得ます。このコミュニケーションの「ズレ」こそが、採用のミスマッチを生み出す根源です。採用担当者には今、Z世代の価値観を深く理解し、彼らの心に響く新しいコミュニケーションを「デザイン」する視点が求められています。
【情報提供】「リアル」と「共感」で惹きつける
Z世代の信頼を得るための第一歩は、徹底して「リアル」な情報を提供することです。彼らは企業の「良い面」だけを並べた完璧なPRには、かえって不信感を抱きます。大切なのは、飾らない等身大の姿を見せ、深い「共感」を育むことです。
企業の「パーパス(社会における存在意義)」を語る
何を売っているか」以上に、「なぜこの事業を行うのか」「社会をどう良くしたいのか」という企業の想いを伝えることが、彼らの心を動かします。自社のパーパスを、社員自身の言葉で語れるストーリーとして伝えることができれば、それはどんなパンフレットよりも強力なメッセージになります。
ポジティブな情報だけでなく「企業の課題」も誠実に伝える
透明性の高い情報開示は、学生からの信頼を獲得する上で極めて重要です。「現在、業界全体でこんな課題があり、私たちはこう乗り越えようとしています」といった誠実な情報共有は、学生に「この会社は信頼できる」という印象を与え、入社後のギャップを防ぐ効果もあります。
「働き方の柔軟性」を具体的に記載する
「リモートワーク可」という言葉だけでは、実態は伝わりません。「週3日までリモート勤務を選択している社員が全体の4割」「月平均残業時間は15時間」のように、具体的な数字を用いて示すことで、学生は自身の働く姿をリアルに想像できます。
選考プロセス全体像と所要時間を「最初に」明示する
時間を有効に使いたいという「タイパ」意識の高いZ世代にとって、先行きが見えない状況は大きなストレスです。「選考は全部で3回、内定まで約1ヶ月です」のように、選考フローの全体像とかかる期間、次のステップまでのリードタイムを最初に明示しましょう。学生の時間を尊重する姿勢を示すことは、誠実さのアピールに繋がり、結果として選考離脱率の低下にも貢献します。
【対話】「個」を尊重し、エンゲージメントを高める
Z世代を「最近の若者」とひとくくりにするのではなく、一人ひとりが持つ個性や価値観を深く理解しようと向き合う姿勢が、エンゲージメントを高める上で不可欠です。面接は「評価の場」であると同時に、相互理解を深める「対話の場」であるべきです。
「ガクチカ」の成果ではなく「プロセス」と「感情」を深掘りする
「何をしたか(What)」という成果だけでなく、「なぜそう考えたか(Why)」「その時どう感じ、何を学んだか(How)」といった、その人ならではの思考や価値観を引き出す質問を心がけましょう。学生の内面を深く知ろうとする姿勢そのものが、彼らにとって「自分という個人に興味を持ってくれている」という強いメッセージになります。
適性検査を「対話のきっかけ」として活用する
適性検査を単なる選考ツールで終わらせるのは非常にもったいないことです。例えば、当社の適性検査eF-1Gのような客観的なデータを用いれば、学生自身もまだ言語化できていないポテンシャルや動機について、より深い対話が可能になります。「診断結果を見ると、あなたはチームで何かを成し遂げることに喜びを感じるタイプのようですね。そう感じた具体的な経験はありますか?」といった問いかけは、学生の自己理解を助け、貴社への興味を深めるきっかけとなるでしょう。
自社の「弱み」について、学生の意見を求める
「今、当社にはこんな課題があるのですが、あなたならどう考えますか?」と問いかけることは、学生を「評価される側」から、未来の仲間という「対等なパートナー」へと引き上げます。この当事者意識の醸成が、彼らの入社意欲を大きく高めることにつながります。
【フィードバック】「成長実感」と「誠実さ」で信頼を築く
選考プロセス全体を、学生にとって「学びと成長の機会」として提供する視点を持ちましょう。合否に関わらない誠実な対応は、たとえご縁がなかったとしても、学生を貴社のファンに変える力を持っています。
評価した点を具体的に伝える
選考を通過した学生には、「コミュニケーション能力を評価しました」といった抽象的な言葉ではなく、「〇〇という経験について、ご自身の言葉で論理的に話せていた点を高く評価しました」と具体的に伝えましょう。自分が認められた理由が明確にわかることは、彼らの自信と成長実感に繋がります。
内定者期間を「成長の機会」として提供する
eF-1Gの結果フィードバック面談などを通じて、「あなたのこんな強みは、入社後にこんな風に活かせる」と伝えることは、内定ブルーを防ぎ、入社への期待感を醸成する上で非常に効果的です。内定から入社までを、空白期間ではなく、自己理解を深める助走期間としてデザインしましょう。
まとめ
Z世代との採用コミュニケーションで最も重要なのは、小手先のテクニックではありません。「リアルな情報提供」「個を尊重する対話」「誠実なフィードバック」という、企業としての一貫した誠実な姿勢です。
彼ら一人ひとりと真摯に向き合い、その可能性を信じて対話を重ねること。それこそが、これからの新卒採用におけるエンゲージメントの核となるのです。
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Z世代の心を掴む!採用コミュニケーション改善チェックリスト
Z世代の傾向を踏まえ、「情報提供」「対話」「フィードバック」の3つの観点から、新卒採用におけるコミュニケーションを見直すためのチェックリストになります。
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